博士に進学するか就職するか 海外か日本か

ちょっと前に後輩から「海外で博士をとることに興味をもっているが、やっぱり無難に日本で就職したほうがいいか、迷っている。一番の心配事は学費です。」と質問をもらった。

アメリカの大学院などで、RAやTAを貰ったりすれば、学費がかからないどころか給料が貰えるのは今や常識なのかと思っていたのだが、そうでもないらしい。(後輩は、海外留学経験もあるし、先鋭的な子だと思う。)ので、ここに私なりの後輩への解答をコピペしたいと思う。私はオランダの大学院の博士課程(物理学)に在学中である。

メッセージを要約すると、「海外の方が、学費も払わなくていいことが多いし、給料を貰えることも多いよーん。場所はによりけりだけどね。博士までいくんなら、どこの国かとか、どこの大学かより、どの研究室かが重要じゃね?ま、でも海外にいた方が英語も出来るようになったりするしねー。日本だと学振DC1もらっても金銭的に大変だから、海外の方が良い場合が多いかもね。日本で無難に就職するのとどっちがいいかは、個人の価値観の問題じゃね?」って感じだ。

人生に関することだから、決めるのは大変だ。だからこそ、自分でたくさん情報を取りに行って、悔いのない選択をして欲しいと思う。

 

海外での博士課程進学について——–

財政面に関しては、オランダの大学の場合は、Ph.D.studentは、日本でいう学生ではなく、大学と雇用関係を結んでいるemployeeです。だいたい、日系企業の初任給もしくは、為替によってはそれ以上の給与をもらっています。授業料を払う必要はもちろんありません。

ヨーロッパは国によっては違いがありますが、奨学金もしくは、
フランスもオランダよりは低い額だと思いますが、給与や奨学金が必ず貰えるようだった気がします。

給与だけで見るならば、おそらくスイスのPh.D. studentが世界で一番高給取りだと思います。(生活費もそれなりに高いですが。)

アメリカについては、 http://gakuiryugaku.net を参照して下さい。(イギリスやスイスの大学の情報についても載ってたと思います。)奨学金などの情報も載っていると思います。メーリングリストにも登録してみるといいと思います。この団体が日本の大学で、説明会を開いたりもしていると思います。

動機については、やりたい研究があるかが一番重要だと思います。博士をとるのは、大変なので、自分のやっている研究内容に魅力を感じて、のめり込めないと辛いものがあると思います。

研究分野によって、色々事情が異なると思いますが、私の分野は巨額な研究費がわりとモノを言う分野なので、日本にいた研究室と今いる研究室では、そういうところで違いを感じます。

オランダやアメリカの研究室であれば、どこでも日本の研究室より予算があるというわけではなく、たまたま私のいるオランダの研究室が、私のいた日本研究室より、予算が豊富というだけです。(アメリカの著名な大学にも全く研究費がない研究室があったりするので注意して下さい。)

日本の研究室に居る時は、やりたい研究があっても予算の都合で出来なかったりしましたが、オランダの研究室では、そのようなことがありません。教授を説得出来れば、予算をつけてくれます。
(私が日本で所属していた研究室は学内でも群を抜いて潤沢な研究費を持っていました。ただ、上には上がいるということです。また、実験系の場合、予算があるかどうかが大きく成果に作用してきますが、理論系の場合は、さほど関係ありません。)

研究費については、日本と海外の違いというより、研究室個々の違いだと思います。

博士課程まで進むとなると、何の研究をするかということが重要なので、どの国か、どの大学も重要なのですが、どの研究室かということが一番重要だと思います。

ですので、日本の研究室でやりたいことがあれば、日本で博士をとるのもいいとは思いますが、やはり、日本だと財政的な問題がありますよね。学振DC1をとれたとしても、授業料を収めなければいけなかったりするので、アメリカやヨーロッパの大学院に来た方が、財政的に楽だと思います。

また、欧米の大学に比べて、日本の大学はやはり閉鎖的です。アメリカには世界各地から優秀な学生が集まります。オランダの場合は、ヨーロッパ各地からの学生が多いです。月並みな話ですが、英語も海外に居た方が上達すると思います。

博士取得後の進路については、分野によって違うと思うので難しいのですが、私のいるオランダの大学の人達は、米国AppleやオランダPhilipsに就職したり、もしくはヨーロッパ・アメリカの他の大学でポスドクをする人が多いです。また、ポスドク後にヨーロッパ特許事務所に就職した人もいます。物理・数学系でアメリカでPh.D.をとって、アカデミアの世界に愛想を尽かした人は、金融系やコンサルで働いたりする人が多いと聞きます。

英語でも、日本語でも、ぐぐってみると、色々な情報が出てくると思います。(私の情報は古い可能性もあるので、是非自分で調べてみてください。)

無難に就職するか、博士に進学するかは、どういう人生を歩みたいかによって変わってくるかと思います。博士に進学するかどうかの判断は、そこまでして研究したいことがあるかどうかが、大きな指針の一つになると、私は思っています。

身近な人の自殺から立ち直るための本:夜と霧

過去に自殺遺族の体験談の本を2冊紹介したが、一番役立ったのは実はこの本である。

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録    V.E.フランクル

Man’s serach for meaning (原著)

夜と霧 (日本語訳)

ナチスの強制収容所の悲惨さは語るまでもないが、自殺も日常茶飯事であった。 また収容者の自殺を止めること(首吊りの縄を切ったりすること)は禁止されていた。

強制収容所での自殺は、「なぜ?」という問いはあまりないという点が、戦争状態でない場所での自殺と違うかもしれない。

二部構成で、一部は強制収容所での生活を悲惨さを強調するようにではなく、平然と事実を述べている。二部では、人間の精神状態に焦点を当てている。 辛い状況下で生きるTIPSがたくさん書かれている。

私が一番救われたのは、下記のくだり。

It did not really matter what we expected from life, but rather what life expected from us. We needed to stop asking about the meaning of life, and instead to think of ourselves as those who were being questioned by life—daily and hourly.

私たちが<生きる意味があるか>と問うのは、はじめから誤っている、人生こそが問いを出し私たちに問いを提起しているのだから

何のために生きているかわからない、という私の嘆きに対して一番の答えになりました。 Victor フランクル、ありがとう、本当に。

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最近、何事も無く帰ってくる夢をよく見る。 「あぁ、そうだよね~。自殺なんかするわけないよね・・・。私が一人で心配してバカみたい・・・。」 と毎回夢の中で思う。

自殺直後も、帰ってくる夢をよく見ていたけど、その頃は、バラバラになって帰ってきたり、形が変わって帰ってきたり、「そんなことするから、こんな風になっちゃったじゃん。バカー!」と泣きながら言ってて悲しいけど帰ってきてくれて嬉しい という夢だった。