Kamikaze

パリでの同時多発テロに関するフランス語の報道で、自爆テロを起こした人物をkamikazeと表現している。

 

「自爆テロ」自体には、attentat-suicideというフランス語が存在する。

フランスメディアの中で「自爆テロ」自体にkamikazeを用いているのも散見されるが、

自爆テロを起こした人物に対してkamikazeと呼んでいる例が多く見られる。

日本語話者としては、これに違和感を感じる。

第二次世界大戦のkamikazeは自爆テロの一種には間違いないが、すべての自爆テロがkamikazeではないだろう。

そもそも、神の風という元の意味を知っているから日本語話者は違和感を感じるのだろう。

 

いつ頃から、このような用法が広まったのか不明だが、おそらく米国の同時多発テロがきっかけであろう。

あの時の自爆テロは、飛行機を墜落させる形で起こったので、第二次世界大戦の旧日本軍の(神風)特攻隊を想像するのも、理解出来る。そこから転じて、kamikazeが自爆テロを行う人物に対して用いられるようになったのだろうと推測する。

 

日本人としては、このような用法に若干の不快感を覚えるが、言葉とはこういうものなので仕方がない。日本語の(特攻隊とは関係ない元々の)神風とローマ字となったkamikazeは全く別の言葉だと認識するべきであろう。

(私が、神風という言葉から特攻隊以外で最初に想像するのは、元寇である。)

旧日本軍の特攻隊がフランス人にとって、代表的な自爆テロの例なのであろう。戦時中の戦闘とテロを同一視して良いかという問題もまたあるが、自爆テロというよりは自爆攻撃という意味で使っていると考えていいかもしれない。

 

これらの事情を考慮しないにしても、今、混乱下にあるフランスに対してkamikazeという言葉の使用を避けるように求めることはやめるべきである。