同僚のポスドクが自殺した 1

今月はじめ、同僚のポスドクが自殺した。

 

私はそのポスドクのことを、今まで会った研究者の中で、最も優れている研究者だと思っていたし、今もそう信じている。

私が彼をそう評価すると、死んだ彼を美化していると思われることもあるが、そうではない。

もし、彼が将来テニュアを取れなかったら、アカデミアの世界はおかしい、間違っている、とさえ思っていた。

しかし、生きていくことさえ出来なかった。では、アカデミアの世界というよりも、この世界自体がおかしいのか。

 

私の所属する研究グループは世界的に超有名な研究者が何人もいる。(必ずしも、超有名=超優秀ではない。)

その中でも、彼が物理学者として、一番才能があると思っていたし、今も思っている。

物理全般に対する幅広い知識、データに対する深い洞察力。

測定装置に対する深い知識。物理の理解を深めるための数学の知識。

測定のためのプログラミングや、シミュレーション。速くて正確。

悔しいが、どんなに努力しても、一生、彼には敵わないだろう、と思った。

 

私の所属する研究グループに彼が加わったのは、9ヶ月前。私が既に進めていた研究プロジェクトに彼も参加することになった。